2011年11月05日

障害者基本法改正案審議の議事録より



障害者基本法 衆議院内閣委員会の審議から
障害者基本法について審議された衆議院内閣委員会の議事録から
教育について一部抜粋

内閣委員会 → 第14号
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

障害者基本法改正案 教育条項(第16条)

(教育)
第十六条
1 国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければ ならない。

2 国及び地方公共団体は、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しな ければならない。

3 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに人材の確保及び資質の向上、学校施設の整備その他の環境の整備を促進しなければならない。
   


  *  *  *   *   *  *   *   *   *   *   *   *





○大島(敦)委員
 政府案第十六条第一項では、ともに教育を受けられるよう配慮する旨が規定され、第二項では、障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び生徒の交流及び共同学習による相互理解の促進が規定されておりますが、第一項と第二項の関係はどのように理解すればよろしいのでしょうか。

○末松副大臣
 まず、十六条の趣旨から御説明申し上げますが、この法律の第一条の「目的」のところで共生社会の実現というのが書いてございまして、読みますと、
「全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」と書いてございます。これが十六条の趣旨でございます。これを教育の場で具現したのが十六条でございます。

 そこで、十六条第一項で、可能な限り障害者である児童生徒が障害者でない児童生徒とともに教育を受けられるよう配慮する旨の規定を置きまして、具体的には、
障害者である児童生徒が障害者でない児童及び生徒と一緒に同じ学校の通常学級に在籍しながら教育を受けられるようにするという、この基本的方向性を示したところでございます。

 一方、障害者本人、保護者が特別支援学校や特別支援学級などにおける教育を受けることを希望する場合もございます。こういうともに学ばない場合であっても、目的の趣旨を踏まえて、互いの交流や共同学習を通じて相互理解を促進しなければいけないという趣旨から、この同二項を規定しているところでございます。

○山崎(誠)委員
十六条は、教育の場面ですね。障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と教育が受けられる。

 これらの規定に「可能な限り」という文言がついている。これはほかの場面でも議論になっていると思うんですが、この「可能な限り」という文言をつけている趣旨、理由をお尋ねしたいと思います。

○村木政府参考人
第十六条第一項につきましては、例えば聴覚障害のある児童生徒など、本人にとって最も適切な言語、コミュニケーションを習得するために、本人、保護者が特別支援学校や特別支援学級等における教育を受けることを希望する場合などもあることを考えまして、「可能な限り」というふうに規定をしたところでございます。

「可能な限り」という表現については、議論の過程でもさまざまな御意見がございました。「可能な限り」と書くことで、基本的な方向に向けての努力が少しそがれてしまうのではないかという御懸念もありました。

 この表現が一番よかったかどうかという問題はございますが、私どもが込めた思いとしては、
基本的な方向に向けて最大限の努力をするという趣旨でこういった表現を使っているという気持ちを酌み取っていただければというふうに存じます。

○山崎(誠)委員 
インクルーシブ教育、これが今回の改正の一つの大きな目玉になっていると認識をしております。現状と課題、そしてこれを踏まえて今後どのように推進をしていくのか、文科省の方にお尋ねをしたいと思います。

○徳久政府参考人
 文部科学省におきましては、インクルーシブ教育システムの確保に関する取り組みといたしまして、これまで、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の新学習指導要領等に、各学校における障害のある子供と障害のない子供の交流及び共同学習について、まず明記をいたしました。また、障害のある子供の就学先の決定に際しまして、平成十九年以降、保護者の意見聴取を義務づける等の取り組みを行ってきたところでございます。

 課題ということでございますが、先ほど御答弁いただきました昨年十二月の中央教育審議会の特別支援教育の在り方に関する特別委員会の論点整理におきまして、次のような点を指摘しております。

 まず、インクルーシブ教育システムの理念とそれに向かっていく方向性には賛成である。また、学校教育においても、共生社会の形成に向けた理解の促進を図る教育の一層の充実を図っていく必要がある。就学先の決定のあり方につきましては、就学基準に該当する障害のある子供は原則特別支援学校に就学するという従来の就学先決定の仕組みを改めて、新たに、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人、保護者の意見、専門家の意見等を踏まえた総合的な観点から決定する仕組みとする。その際、
本人、保護者に対し十分情報提供をしつつ、本人、保護者の意見を最大限尊重し合意形成を行うことを原則とし、最終的には市町村教育委員会が決定するなどの仕組みとすることなどの御提言をいただいたところでございます。

 文部科学省といたしましては、障害者基本法の改正や中央教育審議会の議論等も踏まえながら、障害のある子供の就学先決定の仕組みについて速やかに検討するなど、可能な限り障害のある児童生徒が障害のない児童生徒とともに学ぶことに配慮しつつ、障害のある児童生徒の教育的ニーズに最も的確にこたえる指導を提供できる教育システムの構築に努めてまいりたいと考えてございます。また、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との交流、共同学習を積極的に進めることによって、その相互理解を促進し、障害のある児童生徒への偏見をなくすよう努めてまいりたいと考えてございます。

○山崎(誠)委員

 ありがとうございます。

 インクルーシブ教育の現場、私も、地元の小学校で、普通のクラスで障害のある方が一緒に暮らす姿を見てまいりました。非常にそのクラスはうまくいっていまして、普通の健常の子供たちがその子を本当に温かく見守っているんですね。

 エピソードを一つ御紹介すると、体育の着がえの時間にその子がいなくなっちゃったんです。いなくなっちゃって、姿が見えなくなった。先生が○○ちゃんがどこにいるのか捜してこいと声をかけたら、子供たちがばあっと捜しに行きまして、五分か十分でしょうか、いたよと言って連れて帰ってくるんですよね。そういう自然の中に、その子をどうやって自分たちは守っていけばいいのか、一緒に暮らすというのはどういうことかというのを本当に体感している場面を見ました。

 これはうまくいっている事例だと思うんですけれども、私は、これを原則にするんだという姿勢は、今回の基本法ではぜひ徹底していただきたいなと思っている次第です。

 一つの事例で、先ほどあった論点整理の表を見ているんですが、これは障害のある児童生徒の就学先決定についての手続の流れという図なんですが、最後にどちらに行くか、特別支援学校に行くのか普通の小中学校に行くのかという図を見ると、上が特別支援学校なんですね、下が普通の小中学校なんですよ。これは、前回、修正をする論点で、こういうのがいいということになっているんですけれども、私は、これはやはり逆にしなきゃいけないと。

 原則、小中学校、普通のクラスにとにかく通うことができないか、最大限の努力をして。でも、先ほどありました、個別の子供たちのニーズやあるいは状況に応じて特別支援も必要でしょう。そういう流れに変えていくのが今回の基本法の改正だと思っておりますので、ちょっと答弁をいただく時間がありませんけれども、ぜひ進めていただきたいと思います。

○山崎(誠)委員

 ありがとうございます。

 ここは非常に時間もかかると思いますし、ぜひ発信力のある蓮舫大臣もどんどん発信をして、やはり国民に訴えていくことが大事ではないかなと。

 それからもう一つ、先ほどのインクルーシブ教育というのは、私は絶対にそういった意味でも力がある制度だと思います。本当に、
心がやわらかくて柔軟で、いろいろなものをしっかりと受け取っていただける子供の時代にそういう障害のある方々も一緒に暮らすことが、どれだけ偏見をなくすことに役立つか。
 

このインクルーシブ教育というのは、障害のある方だけの教育ではなくて、むしろ障害のない我々であったりあるいは子供たちであったり、そのために大事な制度だろうと。だから、ぜひそういう方々を受け入れる教育、それが偏見をなくすために大事な取り組みだと私は思っておりますので、
ぜひよろしくお願いをしたいと思います。
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