2010年06月10日

続 障がい者制度改革推進会議(第一次意見)

続 障がい者制度改革推進会議(第一次意見)


第1次意見を視覚障害の方用に音声読み上げ用テキストにしました。
間をツメたりしてできるだけ読み易くしたつもりですが、不十分な点はお許しください。
(大阪、山名)


障がい者制度改革推進会議 第14回(H22.6.7) 資料1
障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)(案)
平成22年6月7日
障がい者制度改革推進会議

目次

Ⅰ はじめに
1.序

2.国際動向と障害者権利条約
1)世界人権宣言と条約化の背景
2)障害に関連した国際連合の動き
3)障害に関連した諸外国の動き
4)障害者権利条約

3.障害者制度改革
1)障害者制度改革に向けた動き
2)障害者制度改革に関する審議の経過

Ⅱ 障害者制度改革の基本的考え方
1.「権利の主体」たる社会の一員
2.「差別」のない社会づくり
3.「社会モデル」的観点からの新たな位置付け
4.「地域生活」を可能とするための支援
5.「共生社会」の実現

Ⅲ 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方
1.全体的な当面の進め方
1)平成 22年内の進め方
2)平成 23年以降の進め方

2.基礎的な課題における改革の方向性
1)地域で暮らす権利の保障とインクルーシブな社会の構築
2)障害の捉え方
3)障害の定義
4)差別の定義
5)言語・コミュニケーションの保障
6)虐待のない社会づくり
7)障害の表記
8)実態調査

3.横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方・・・
1)1障害者基本法の抜本的改正
  2改革集中期間における推進体制
2)「障害を理由とする差別の禁止法」(仮称)等の制定
3)「障害者総合福祉法」(仮称)の制定

4.個別分野における改革の基本的方向と今後の進め方
1)労働及び雇用
2)教育
3)所得保障等
4)医療
7)建物利用・交通アクセス
8)情報アクセス・コミュニケーション保障
9)政治参加
10)司法手続
11)国際協力

Ⅳ 日本の障害者施策の経緯
1.戦前・戦中
2.戦後直後
3.1960年代
4.1970年代
5.1980年代から 1990年代前半
6.1990年代後半から現在


 スマイル”Ⅰ はじめに 1.序”
   ”Ⅲ 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方
    4.個別分野における改革の基本的方向と今後の進め方
     2)教育 ・ 5)障害児支援 ・ 6)虐待防止 ”
 を抜粋しました。

はじめに

1.序

“Nothing about us without us”(私たち抜きに私たちのことを決めるな)は、「障害者の権利に関する条約(仮称)」(以下「障害者権利条約」という。)策定の過程において、すべての障害者の共通の思いを示すものとして使用された。これは、障害者が一般社会から保護される無力な存在とされ、自分の人生を自らが選択し、自らが決定することが許されなかった障害者の共通の経験を背景としている。そして、一般社会による保護的支配からの脱却と普通の市民としての権利を持つ人間であることを強く訴えるものであった。
しかし、このような障害者のあたりまえの思いを一般社会が受け入れるまでには、長い歴史の時間を要した。日本においても、戦前の国民優生法(1940)を戦後に強化した優生保護法(1948)が「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」という目的を掲げ、強制的な不妊・断種手術が障害者を始め1万6千人以上に対して実施された。まさに障害者が本来あってはならない存在であることを国家が法律で規定していたのである。同法の優生条項が削除され、母体保護法となったのはようやく 1996年であった。

障害者に関連する施策が徐々に進展してきたことは事実である。しかし、依然として、日本の障害者は、多くが貧困層に属し、本人が希望する地域での普通の生活を許されずに施設や病院で一生を過ごす人も数多く存在する。およそ1世紀も前に、精神科医の呉秀三は日本の精神障害者の置かれた状態を「此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外ニ、此邦ニ生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ」と述べているが、その状態は時代の進歩を経た現在においても基本的には変っていない。障害者に一般市民以下の生活と無権利状態をもたらしている私たちの社会の認識と国家の政策をどう変えるのか、そしてこのような社会の在り方が障害者の現在の状態を生み出している状況をどのように転換していけるか、まさにその大きな変革(Change)が求められている。

戦後、日本の障害者に関連する法制度は日本国憲法が保障する社会権を基盤としながら順次整備されてきたが、自由権を基盤とする権利を保障する法律は皆無に近い。その結果、社会権を基盤とするサービスは自由権的基盤を有しない無権利性と、自由権そのものを侵害しかねない一般社会からの排除ないし隔離的傾向をもたらしている。障害者権利条約の視点に立ち、自由権と社会権の枠組みを越え、市民との平等を基礎とした人権法に向けたパラダイムの転換が求められている。
そうしたパラダイムの転換があってこそ、社会権を基盤とするサービスも真に障害者のニーズに基づく形で提供されるようになるとともに、その充実にもつながる。福祉・医療・教育などの社会権の実現は、依然として自己責任や家族依存の色彩を強く残し、質的にも量的にも不十分である。今後は障害児・者が個人として尊重され、差別なく平等に地域社会の一員であることが認められることが政策目標とされなければならない。

今、世界の障害者は、障害者権利条約の策定過程への参画(決定権を持つ参加)を通して、自らの存在を示すとともに、障害種別を超えた連帯による変革の可能性を明らかにした。障害者権利条約は、障害関連の政策決定過程に障害者自身の参画を求めている。それは障害者の主体的な参画と、政府及び一般社会との新たなる関係と協働の創造こそが、障害者自身を含む社会のすべての人の意識と制度を大きく変える原動力だからである。障害者を含む、あらゆる人の参画によって、私たちの社会は一層、本当の意味で豊かで、個人や集団の違い・多様性を尊重する、真に創造的で活力ある社会となることができると、私たちは確信している。
2009年9月に誕生した民主党を中心とする政権は、この障害者権利条約の趣旨に即して、障害者の制度改革の新たな枠組みとして、「障がい者制度改革推進本部」の下に「障がい者制度改革推進会議」(以下「推進会議」という。)を設置し、障害者とその関係者を中心とした改革のためのエンジン部隊を用意した。
私たちは、かつてないこのような画期的な推進会議の一員として制度改革の重責を自覚し、本年1月より関連する制度全般にわたって各回4時間を超える議論を全 14回にわたって重ねてきた。
ここに提示する第一次意見書は、私たちの総意として日本の障害者制度の諸課題について、その改革の基本的方向を示したものである。



障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方 

4.個別分野における改革の基本的方向と今後の進め方

2)教育


(推進会議の問題認識

障害者権利条約においては、あらゆる教育段階において、障害者にとってインクルーシブな教育制度を確保することが必要とされている。

障害の有無にかかわらず、それぞれの個性の差異と多様性が尊重され、それぞれの人格を認め合う共生社会の構築に向け、学校教育の果たす役割は大きい。人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加するとの目的の下、障害者と障害のない者が差別を受けることなく、共に生活し、共に学ぶ教育(インクルーシブ教育)を実現することは、互いの多様性を認め合い、尊重する土壌を形成し、障害者のみならず、障害のない人にとっても生きる力を育むことにつながる。

また、義務教育だけでなく、就学前の教育、高校や大学における教育及び就労に向けた職業教育や能力開発のための技術教育等についても、教育の機会均等が保障されなければならない。

なお、現行の教育基本法の第4条第1項の教育上差別されない例示に「障害」が明記されていないところであり、「障害」が除かれる趣旨ではないものの、今後明文化することも検討すべきである。



【地域における就学と合理的配慮の確保】

日本における障害者に対する公教育は、特別支援教育によることになっており、就学先や就学形態の決定に当たっては、制度上、保護者の意見聴取の義務はあるものの、本人・保護者の同意を必ずしも前提とせず、教育委員会が行う仕組みであり、本人・保護者にとってそれらの決定に当たって自らの希望や選択を法的に保障する仕組みが確保されていない。

また、特別支援学校は、本人が生活する地域にないことも多く、そのことが幼少の頃から地域社会における同年齢の子どもと育つ生活の機会を失わせたり、通常にはない負担や生活を本人・保護者に求めたり、地域の子どもたちから分離される要因ともなっている。

障害者が地域の学校に就学し、多大な負担(保護者の付き添いが求められたり、本人が授業やそれ以外の教育活動に参加しにくいまま放置される等)を求められることなく、その学校において適切な教育を受けることを保障するためには、教育内容・方法の工夫、学習評価の在り方の見直し、教員の加配、通訳・介助者等の配置、施設・設備の整備、拡大文字・点字等の用意等の必要な合理的配慮と支援が不可欠である。

このような観点から、以下を実施すべきである。

・ 障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし、本人・保護者が望む場合のほか、盲人、ろう者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションの環境を必要とする場合には、特別支援学校に就学し、又は特別支援学級に在籍することができる制度へと改める。

・ 特別支援学校に就学先を決定する場合及び特別支援学級への在籍を決定する場合や、就学先における必要な合理的配慮及び支援の内容の決定に当たっては、本人・保護者、学校、学校設置者の三者の合意を義務付ける仕組みとする。また、合意が得られない場合には、インクルーシブ教育を推進する専門家及び障害当事者らによって構成される第三者機関による調整を求めることができる仕組みを設ける。

・障害者が小・中学校等(とりわけ通常の学級)に就学した場合に、当該学校が必要な合理的配慮として支援を講ずる。当該学校の設置者は、追加的な教職員配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずる。

【文部科学省】

【学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障】

障害者の人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力を可能な限り発達させるためには、教育が本人にとって最も適当な言語並びにコミュニケーションの形態及び手段によって行うことが確保されなければならない。

このような観点から、以下を実施すべきである。

・ 手話・点字・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講ずる。

・ 教育現場において、あらゆる障害の特性に応じたコミュニケーション手段を確保するため、教育方法の工夫・改善等必要な措置を講ずる。

【文部科学省】



(政府に求める今後の取組に関する意見)

○ 障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成 22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。

○ 手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成 24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る。




5)障害児支援


(推進会議の問題認識)

障害児は、一人の子どもとして尊重され、すべての人権、基本的自由を享受しているという観点から、障害児の最善の利益を考慮した施策が講じられる必要がある。



【障害児やその保護者に対する相談支援】

相談支援については、障害児の出生直後又は「気になる」・「育てにくい」段階から、医療及び福祉関係者からの適切な情報提供、心理的サポートが不足しており、障害児を含め、その家族に対する十分な支援が提供されていない。

このような現状を改善するため、以下を実施すべきである。

・ 子どもの障害について、地域の身近なところで第一次的に相談対応を行い、必要に応じて適切な専門機関へとつなぐ仕組みを構築する。

・ 障害児及びその保護者に対する相談や療育等の支援が、障害の種別・特性に応じた言語環境により、かつ地域の身近なところで提供されるよう必要な措置を講ずる。

障害の専門機関の者が地域に出向き、保健センターや地域子育て拠点における保健師、保育士等と連携した効果的な相談支援を提供できるよう、必要な措置を講ずる。

・障害児支援においては、家族(特に母親)に過大な負担を強いる現状を充分に配慮し、家族の負担を減らすための具体的な施策を講ずる。

【児童福祉における障害児支援の位置付け】

障害児支援は、早期に必要な専門的支援が求められる反面、その支援が障害児のみに注目した形でのサービス提供になりがちであるため、その家族への支援や地域社会との関係が置き去りになっている場合がある。また、障害の軽減のみが重視されがちであり、そのことが本人の障害に対する否定的な認識を助長してしまうという問題もある。

このような現状を改善するため、障害児支援については、家族への子育て支援や地域において一般児童と共に育ち合うことが保障される子育て支援や地域において一般児童と共に育ち合うことが保障されるよう、一般の児童福祉施策の中で講じられるようにすべきである。

【厚生労働省】



(政府に求める今後の取組に関する意見)

○ 障害児やその保護者に対する相談や療育等の支援が地域の身近なところで、利用しやすい形で提供されるようにするため、現状の相談支援体制の改善に向けた具体的方策について、総合福祉部会における

議論との整合性を図りつつ検討し、平成 23年内にその結論を得る。

○ 障害児に対する支援が、一般施策を踏まえつつ、適切に講じられるようにするための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成 23年内にその結論を得る。





6)虐待防止


(推進会議の問題認識)

入所施設や家庭内、労働現場や精神科病院等の医療現場等において障害者に対する虐待の例もみられるところであり、虐待の防止やその救済等に関する法整備が急務となっている。立法府においては、障害者の虐待防止に係る制度の法制化に向けた検討がなされているが、今後の法整備に当たっては、政府が行う場合も含め、次の方針に沿って検討されるべきである。

(防止すべき虐待行為)

・ 防止すべき虐待行為は、身体的虐待、精神的虐待、性的虐待、放置、経済的搾取の五つの場合とする。

(虐待行為者の範囲)

・ 障害者の生活場面に日常的に直接かかわりをもつ親族を含む介護者、福祉従事者、事業所等の使用者(従業員を含む。)に加えて、外部からの発見が困難な学校や精神科を始めとする病院等における関係者についても範囲に含める。

(早期発見・通報義務)

・ 虐待の事実を早期に発見できるようにする観点から、障害者の生活に関連する者等に対し、早期発見を促す仕組みとする。

・ 虐待の発見者に対して、救済機関への通報義務を課すとともに、当該通報者の保護のための措置を講ずる。

(救済措置の在り方)

・ 実効性のある救済を行うためには、事実確認、立入検査、一時保護、回復支援等のほか、必要な場合には、強制力を伴った措置を講ずる。

(監視機関の在り方)

障害者権利条約の趣旨を踏まえ、虐待を未然に防止するため、効果的な監視が可能な体制を整える。

【厚生労働省・文部科学省】

(政府に求める今後の取組に関する意見)

○ 障害者に対する虐待防止制度の構築に向け、推進会議の意見を踏まえ、速やかに必要な検討を行う。







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